ピノキオとダンス
友達皆がいなくなっても二人はよくそこでエールを飲んだ。一番安いエールを、お金を出し合って半分こしていた。そうやって未来のことや、今日は何が市場で安かったなどの他愛もない話を沢山していた。
親友と呼べる気軽で大切な相手だったのだ。
だけれども、やがて大きくて長かった戦争はやっと終わり、それぞれの国がそれなりに平和になった時、彼らにも違う道がぐねぐねとのびていて、それは二人の分かれ道でもあった。
じゃあね、また―――――――――そう言ってあの遠い日に手を振って別れてから、その後は会うことなどなかったのだ。その翌日から、彼らの人生は大きく動き出していたからだった。
彼は年下の従妹と結婚して牧場を大きくしていったし、彼女はアメリカに渡る婚約者についていくことにしていた。話が急に進むことが重なって、彼女はすぐに異国へむけて出発してしまったのだ。その時以来、二人の人生が交差することはなかった。
だけど、彼女の連れ合いが病死して、そろそろ70歳の半ばである去年、彼女は生まれ故郷へ一人で戻ってきた。
そしていつでも仲間達とつるんでいた、このパブへと足を運んだのだ。それは自分に対する確認だった。私は確かに、ここで、あの日生きていた―――――――――
まさかそこで、若いころに一番の友達だった男がいるとは思っても見なかった。
二人はお互いが、すぐに判った。耳の形や手の形、そんなところでお互いをしっかりと覚えていて、時間がなかったその日には一言だけをかわしたのだ。
また、会う約束を。
それが今日で、彼女は先にきて待っていた。