神の戯れ
吐いた煙が立ち昇り消え去る中で、何かに気づいた様子の2人。
アスラは珈琲を飲み干すと席を立つ。
「さて、そろそろ此処にも居られないようだ」
代金を支払い礼を言うアスラはブレアに背を向ける。
一定の場所に長居は出来ない。
これ以上此処に居ては彼女に迷惑をかけてしまうと、アスラはそう諭したのだ。
「北に向かってみるつもりだ。折角の情報を無駄にする訳にはいかないし、少し興味を持ってしまったからな」
「そう、それは良かった。私は力になれないけれど、気をつけて。幸運を祈っているわ」
「ありがとう。俺も貴女の無事を祈っているよ、ブレア」
少ない言葉を交わし合い別れる2人。
扉を開き一歩外へ踏み出すと、冷たい強風が吹き荒れる。
乱れた髪をかきあげ振り返ると、其処に並ぶのは背の高い針葉樹林。
在ったはずの喫茶店は既に其処に存在しなかった。