神の戯れ
綺麗に凍り付いた大木は陽の光に照らされ煌めいた。
次第に氷は溶け出し、雫となり地面に零れ潤いを与える。
「そうだそうだ、これはお前に預けておくよ」
何か思い出したように言うとローブの中から取り出した何かをアスラへと投げ渡す。
「これは……」
「彼奴の置き土産だ。俺が持っていても宝の持ち腐れ。だったらお前が持っている方が良いだろ」
受け取ったのは年期の入ったクレイモア。
見覚えのあるアスラは目を細め懐かしそうな顔をする。
「…もしかしてディー、お前、これを俺に渡しに来たのか?」
「んな訳ねぇだろ!偶然だって偶然!」
アスラの言葉を必死で否定するディー。
分かりやすい奴である。
「おっとそろそろ時間だな。俺も暇じゃないんだ、これで失礼するよ」
懐中時計で時間を確認するとフードを被り仮面をつける。
そしてアスラ達に背を向け地を蹴ろうとするが、その足を止め振り返った。
「1つ言っておく、不老不死アスラ・エリクサー、雪女フィノ・ネイジュ、お前達2人の魂は俺が狩る。だから、勝手に死ぬんじゃねぇぞ!」
そう宣言した死神ディー・ラモール。
仮面の下で悪戯に笑ってみせると、吹き荒れた風と共に姿を消した。
風と共に現れ、風と共に立ち去った死神。
既に其処に居ない彼に別れの言葉を呟く不老不死。
クレイモアを握る彼を無言で見つめる雪女。
昇った太陽は静かに彼等を照らしていた。