神の戯れ
「何してるのかな?」
「ぐっ!?」
振り向いた瞬間首根っこを掴まれ壁に押さえつけられたレノリア。
目の前には鍔の広い帽子で顔を隠した1人の男性。
素顔を確認できないが、覗いた口元は笑っている。
「確か君はレノリア・ヴァリエ。優秀な女騎士だと聞いていたけど、残念。秘密を知ってしまった以上、生かしておく訳にはいかない」
更に強く首を絞められ苦しむレノリアは反射的に腰に刺していた剣を振り上げる。
その刃は月明かりに煌めくが男を傷つける事は無い。
瞬時に後方へと跳び回避した男。
解放されたレノリアは息を整えながら前方の彼を睨む。
「今のは反逆行為と受け取っていいのかな?」
「なっ!?ち、違う!正当防衛だ!身を守る為にやったに過ぎない!反逆行為など───」
「残念ながら君の言葉は誰も信じないよ。何せ人々は俺を信頼しきってる。俺の言葉は絶対なんだから」
何故か不思議と震える身体。
刃を収めなければならないと頭では理解しているのに未だ切っ先を男へと向けるレノリア。
何の言葉もでず、彼女は恐怖からか其処から逃げ出してしまっていた。