神の戯れ
カサリと音を立てた深緑の広葉樹林。
風で揺れたのではないそれへと鋭い視線を向けた瞬間、勢い良く何かが飛び出てきた。
「っ!?」
アスラの元へと降ってきたのは1人の女性。
気を失っているその人物は傷だらけで、脇腹は銃で撃ち抜かれたのか真っ赤に染まっている。
「面倒事は嫌いよ」
巻き込まれるのは御免だと立ち去ろうとするフィノ。
しかしアスラはその女性を置いていく気は無いらしく、彼女を抱えフィノの後を追う。
「ちょっと、どういうつもり?」
「怪我人を放っておく訳にはいかないだろう?」
「そうだけど……」
女性を抱えるアスラを目にしたフィノは不満そうな顔をするが、彼に何を言っても同じだろうと溜め息を吐き諦める。
「…本当、男は美人に弱いんだから、まったく……」
小さな愚痴を零すフィノ。
その言葉は前を歩くアスラには聞こえていないようだった。