神の戯れ
この身を掠める冷たい風が心地よい。
サラサラと、清らかに流れる水の音に癒しを覚える。
「っ……」
土の臭いを鼻にしながら、意識を取り戻した女性、レノリア・ヴァリエ。
痛む身体に顔を歪める彼女は他者の存在に気づき腰へと手を伸ばす。
「!?」
が、その手は目的の物を掴む事はない。
そこにある筈の剣が見当たらなかった。
「悪いが、剣は預からせてもらっている。起きた途端斬りかかってこられては困るからな」
「……」
倒れた樹木の幹に腰掛ける男性、アスラを警戒していたレノリアだが、彼が自分を救ってくれた恩人だと理解し直ぐにその警戒を解く。
「礼を言う。手を貸してくれてありがとう」
「応急処置だが、傷の手当てをしたのは彼女だ。礼なら彼女に言ってくれ」
アスラの言葉にもう1人別の人物の存在に気づくレノリア。
彼の視線を追った彼女の瞳は着物を着た女性の姿をとらえた。