神の戯れ
微かに覗いていた陽は完全に沈み、辺りは闇が支配する暗い世界へと姿を変えた。
その身を闇へと同化させるコウモリ。
羽ばたく羽音が不気味に響く。
「いい加減降ろさないか!」
声をあげるのは女騎士レノリア。
不服そうな表情の彼女はアスラに抱えられ何処かへ連れて行かれていた。
「望み通り降ろしてやっても良いが、今放せば数十メートル先の地面に真っ逆様だぞ?」
「っ!?」
顔色一つ変えず淡々と述べるアスラの言葉に下を見下ろすと、そこは底の見えない暗い闇。
地上を確認できない事に高い位置に居るのだと理解し息を呑む。
「心配する必要は無い。フィノは強い。あの数相手なら難なくやり過ごせるさ」
「…心配などするものか。私は只、自らの過ちで他人を傷つけるような真似はしたくないだけだ」
チラリとレノリアを盗み見るアスラ。
拳を握り呟く彼女の様子に微かに眉を潜めながら足を止めた。