神の戯れ
「先に行くわよ。私が居たら邪魔だろうし」
リゲル達の姿が見えなくなった頃、警戒を解いたフィノはアスラに一言言うと姿を消した。
取り残されたのはアスラとレノリアの2人。
1つの小さな風が2人の間を吹き抜ける。
「また……また、会えるだろうか……その、礼もまだだし……」
「どうだろう。この出会いが偶然でなく必然であるのなら、また会う事も可能だとは思うが」
「そうか……もしまた出会う事が出来たなら、その時はこの礼を必ず」
「礼など必要は無いさ。俺は何もしていないのだから」
別れの時は刻一刻と差し迫る。
互いにそれを感じ取る2人は短く言葉を交わす。
「無事を祈るよ、不老不死アスラ・エリクサー。また会える日まで」
「ありがとう。君も気をつけて、美人な女騎士さん」
にこりと微笑み背を向けるアスラ。
振り返る事無く片手を振ると、まるでその場に初めから居なかったかのように姿を消した。
「…君達のお陰で、私の意志は定まった。これから進むべき道は───」
何かを決意した様子のレノリア。
ふっと息を吐くと歩き出す。
艶やかな長い髪を靡かせ歩く彼女の後ろ姿は、曲げようも無い強い意志を秘めたとても立派なものだった。