俺と彼女はコルネカップル
ただ、じっと見ているだけじゃ正直退屈だ。見て触って覚えたい。
俺の気持ちがわかるのか、咲里は 来てと言って俺を呼び、ボールにたんまり入ったカスタードクリームと、絞り袋を渡された。
「 やる?コルネよ、中にクリーム入れてほしいの。見てて、こうやって… はみ出さないようにね?やってみて 」
見よう見真似で、筒型のパイ生地にクリームを入れていくが溢れてしまう。
当たり前に売り物にはならない。
どんなに簡単に見えても、やれば違うことがわかった。
咲里は 俺に、始めからうまく出来る事なんてないと慰める。
ただ、クリーム入れるだけなのに難しい。案外 出来ない事にショックだった。
甘い店なのに、中は苦味でいっぱいだ。
でも俺はパティシエになる、この夢のための第一歩から諦めるわけにはいかない。
「 ねぇ、和久田くんはコルネ好き?」
「 好きかな、あんまり食べないけど。いつも買うのはケーキだから 」
「 そうなんだ… 私はコルネ好きだよ」
コルネ… パイとクリームじゃん、なんか寂しくね?
コルネを練習して、昼からはレジと、ケーキと値段を覚えるために店内に立つ。
俺はここのケーキ屋、セラフシフォンが好きだからケーキも値段もだいたいは把握していたため、覚えとしては早かった。
土日だけのバイトだったが、咲里が一番年も近く、話しやすくて仲良くなり 帰りにカラオケやゲーセン、なるべく俺に合わせて遊んだりしていた。
バイトにもなれてきた2ヶ月を過ぎた頃、バイト終わりにカラオケに二人で来ていた。