旅
ホントは知ってた。
気付いていた。
だからこそ
怖かった。
涙が出た。
抱き締めた腕に
暖かさを感じた。
たぶん
この人の1番には
きっと永遠に
なれないだろう。
この人の心の傷は
直らない。
あたしの役目は
傷を直すんじゃなくて
その傷より
もっともっと
幸せな気持ちで
傷をうめる。
「あなたの気持ちが変わってもあたしの気持ちは変わらないから。信じて」
声が震えた。
涙流した勇の腕が強くなってあたしを抱き締めた。
「ありがとう」