赤鼻とセイント・ミルクティ
「のりくんのりくん、」
制服に着替えてスタッフルームから出ると、さっきまで接客をしていたらしい胡桃(くるみ)さんがツン、と肩をつついていてきた。
俺の肩の高さよりも低い位置でにこにこ微笑んでみせる彼女の手には、リボンで飾られた透明なラッピング袋が握られている。
「可愛い! 手作りですか?」
「うん、お客さまにひとつずつ配ろうと思ってね、焼いてみたんだ」
のりくんにもあげる、と手渡されたその中には、狐色のジンジャーマンクッキーがひとつ。
縦にみっつ、小さなナッツでボタンをとめて。
白いアイシングで描かれた目と口の間に、真っ赤なドレンチェリーの鼻を乗せて。
そのふにゃりと緩んだ憎めない笑顔が、なんとも彼女らしい。