赤鼻とセイント・ミルクティ
どこかそわそわした様子でダージリンのケーキセットを注文してきたその女性は、
テーブルに紅茶が届いてしばらく経っても、落ち着きなく窓の外を見たり携帯を弄ったりを繰り返していた。
時折カップに口をつけてはいるけれど、ほとんど量は減っていなくて。
穏やかな雰囲気で談笑しているカップル客が3組ほどいる中で、たったひとり浮かない顔をして座っている彼女はやけに目立つ。
「あの、こちらお取り替えいたしましょうか?」
せっかくのダージリン。
冷めてしまっては、持ち味の香り高さが半減してしまう。
携帯の画面を覗いて俯く頭にそっと声をかけて、テーブル上のカップをソーサーごと持ち上げようとして、――