赤鼻とセイント・ミルクティ
イルミネーションの鮮やかな光と、クリスマスソングの陽気なメロディに満ちた街の一角。
こんな身も心も浮き立つような夜にだって、やっぱり溶け込みきれない人はいる。
何度も何度も窓の外を眺めて。携帯を固く握りしめて。
不安に胸がざわついて、泣きたくてたまらないのに、気持ちのやり場が見つからないんだ。
あの時の、俺みたいに。
「――ミルクティはお好きですか?」
コトリ、
俺が布巾で拭いていたテーブルに脇からそっと置かれたのは、ほのかに湯気を立てる新しいカップ。
横を向けば、いつの間にかカウンターから出てきていた小柄な胡桃さんが、顔を上げた女性に優しく微笑みかけていた。