貴方をくれなきゃ悪戯するよ?【ハロウィン短編】
だけど、晴樹の困ったような表情ですぐに我にかえった。


うわ、私のばか…!



「ああ、違う!ごめんなさい。面白かったです。


だけど狼が赤ずきんを食べるシーンとかは……」


「自分も食べられたいって思った?」



ちがう、悲しかったって言うつもりだった。


だけどそう思ったのも事実で、言葉に詰まる。



必死に言葉を探していると、晴樹はもう一度私の頭に手をのっけて、


パソコンの前へ戻って行った。


そっとその表情を伺ったけれど、それは完全にお仕事モード。



袖の端で涙を拭ってから


「お風呂、はいってきます。」


小声で背中にそう伝え、立ち上がった。




返事が帰ってこないのは分かりきってるけど、やっぱりこの寂しさには慣れない。
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