最大の出来事
「プリンを分けたらどう?」
「これは分けるけど、自分の金で別の店で何か買うことにするよ」
「そう?」

 プリン以外のものをあげて、空夜を喜ばせたい。
 歩いている途中で片栗粉を買わないといけないことを思い出したので、それも買い物籠の中に入れた。ほかにもいくつか入れてから、レジで買い物籠を置いた。

「思っていた以上に買っていない?」
「足りるから平気だよ」

 支払いを済ませて袋に買ったものを次々と入れ、店を後にする。

「それで空夜の土産、何を買うか決めた?」
「・・・・・・まだ」

 別の日にゆっくりと考えようかと思っていたとき、和菓子屋が目に留まった。普段滅多に行かないところで、今までたった1度しか行っていない場所。
 育実と璃穏が入ると、店員がお茶と饅頭を用意してくれた。

「美味しいね」
「うん。本当だね」

 食べた後、商品を見ると、いそべ餅が置いてあるので、それを凝視する。
 空夜がときどきいそべ餅を買って食べていることを思い出した。

「いそべ餅をください」
「はい」

 店員は笑顔でそれを袋に入れて、その間に財布から小銭を出した。金を支払って商品を受け取り、店を出た。
 璃穏は商品を見ていたものの、支払いが済んだときに見ることをやめた。

「良かったの?何も買わなくて」
「うん、見ていただけだから」
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