最大の出来事
 一桜にクラス全員分のノートを半分配ってもらい、育実が感謝しながら配っていると、黒板消しを落としてしまったので、盛大な溜息を吐いた。
 育実がドジなのはクラスメイトや他のクラスの一部の人達も知っているので、やれやれと思いつつ、手を貸す人達が多い。

「どうにかならないかな?」
「育実、さっさと拾う」
「わかっているよ」

 学校が終わって、育実はあちこちの店で寄り道をしていた。
 欲しかったペンケースと菓子が手に入ったことに満足しながら帰り道を歩いていると、いつも通る道が工事で通ることができず、橋を通らなければならなかった。階段を上って橋を渡っていたときに何も躓くものがないにもかかわらず、躓いてしまった。
 躓くだけならまだましだった。育実の前を歩いていた男の背中を躓いたときに力強く押してしまったために彼は階段から転げ落ちてしまった。

「あっ!!」
「うわああああ!!」

 育実は血の気が引いて、顔を青くしながら、彼に駆け寄って必死に声をかけるが、彼は気を失っていた。

「ど、どうしよう、きゅっ、救急車!」

 鞄から携帯を取り出して、救急車を呼んだ。
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