最大の出来事
「自分の好きなものを食べたときとか、面白いことがあったら、笑っているよ」
「彼女でもできたのか?」

 どうやら弁当を見たときからずっと気になっていたようだ。

「違うよ」
「本当か?」
「うん。でも、妹みたいな、ペットみたいな女の子と話すようになったよ」
「何だそりゃ・・・・・・」

 しっかりと耳を傾けていた育実は椅子から落ちてしまいそうになっていた。
 本当だったら、文句を言いに行きたいのだが、そうしてしまうと一緒に住んでいることがバレてしまうので、何とか堪えた。璃穏がそんな風に思っていたことにショックを受けていると、暗くなった育実を一桜は心配していた。

「育実?どうかした?」
「ううん、何でもないよ!」

 いつものように笑顔で言った育実が嘘を吐いていることくらい、一桜は見破っている。
 自分が普段からドジをしてしまうから、仕方のないこと。璃穏の弁当の中にたこさんウインナーを入れたから、子どもっぽいと思われたのかもしれない。
 育実はそうやって、自分に言い聞かせた。

「育ちゃん、ありがとう。美味しかったよ」
「どういたしまして」
「またよろしくね」
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