最大の出来事
 放課後、中庭へ呼び出された育実は璃穏から空になった弁当箱を受け取った。
 弁当を食べた後もずっと璃穏は笑顔でいたので、いつもと違って、数人の生徒達が話しかけていた。

「隠れて渡すのなら、家で渡してくれていいんだよ?一緒に住んでいるのだから」
「そうだけどさ・・・・・・」

 すると、璃穏の顔が少しだけ赤くなった。

「ちょっと恥ずかしくて、会社帰りの夫が妻に渡すみたいじゃない?」

 まさか璃穏がそんなことを考えているとは思っていなかった。

「そこまで考えるんだ・・・・・・」
「育ちゃん、いつから料理をするようになったの?」
「小学生くらいからかな」

 小学生の頃から母親と料理をしていき、徐々に力がついた。
 一人で料理をするときに、最初は失敗が多くて、まともに食べられるものがなかった。クリームシチューを大きな白玉団子にすることもあれば、白身魚を黒身魚にしてしまうこともよくあった。
 振り返れば、懐かしい思い出だった。
 
「今度はさ、竜田揚げを入れて。それと卵焼きにねぎを入れたものも」
「了解」
「楽しみだな」

 璃穏は育実の料理をとても気に入った。
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