最大の出来事
 今まで何度も母親の料理や外食をしていて、美味しいものをたくさん食べたけれど、育実の料理は何度食べても飽きなかった。

「今日は驚いたよ」

 いつもは璃穏に近づかないのに、みんなが来たから。

「初めてちゃんと喋っていなかった?」
「そうだね。阿佐部君が弁当のおかずを食べようとしたときは焦ったよ」
「驚いた・・・・・・」

 友希が弁当箱の蓋で指を挟まれていても、璃穏はすぐに力を緩めなかった。それを見て、クラスメイト達が笑っていた。

「今日の夕飯は何を作るか、もう決めている?」
「ううん、まだ決めていないよ。何がいい?」

 璃穏は野菜炒めをリクエストした。

「じゃあ、それに中華スープも作って、餃子は?」
「食べたいな」
 
 今日の夕食の献立が決まった。材料は揃っているので、スーパーへ買いに行く必要はない。

「これから別のところで昼食を食べようかな」

 璃穏は小さな声でそう呟いた。

「どうして?」
「育ちゃんの弁当を死守するために」
「そんなに嫌なんだ・・・・・・」
「もちろん!」

 友希に弁当を食べられそうになったことが相当嫌だったようだ。他のクラスメイト達も璃穏の弁当を覗き込んで見ていたので、狙われる可能性がある。
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