最大の出来事
 何を食べようかと話しながら歩いていると、中華料理屋があったので、育実はそこで立ち止まった。

「ここにする?」
「ここは美味しいから好きだよ。璃穏君、どうする?」
「お腹が空いているから、ここにしよう」

 店内へ入ると、店員が席へ案内してくれた。椅子に座り、育実が挟んであったメニューを取ろうとしたときにメニューが横に倒れてしまった。
 それを見た璃穏はすぐに元に戻してから、育実にも見えるようにメニューを開いた。

「育ちゃん、店員さんが必死で笑いを堪えていたよ?」

 育実もそのことに気づき、余計に恥ずかしくなった。

「好きでやっていないのに・・・・・・」
「下手したら、箸までテーブルにぶちまけるところだったよ?」
「それにも気づいていたのね・・・・・・」

 育実は塩ラーメンに決めたので、メニューを璃穏に渡すと、真剣に眺めている。
 璃穏はチャーシューメンにするか、ラーメンセットにするか迷っているようだった。メニューを閉じて、通り過ぎようとした店員を呼び止めて、チャーシューメンと塩ラーメンを注文した。
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