最大の出来事
「トイレで女子達がずっとお喋りしていてさ、別の階へ行っていたんだよ」
「他の場所で喋ればいいのにな・・・・・・」

 友希の机にはクラス全員分の英語のノートが置いてある。

「阿佐部君、運ぶのを手伝うよ」
「お!サンキュー!でも、今来がいるから・・・・・・」

 一桜は申し訳なさそうな顔で両手を叩いて、頭を下げた。

「ごめん!ちょっと先生に呼ばれているから、これから行かないと!」
「職員室じゃないのか?」
「職員室だったら、ちゃんと半分持って行くわよ」

 一桜はどうやら先生に資料室に呼ばれているらしい。

「だったら、仕方がないか。信多、頼む」
「わかった」
「育実、ごめんね?」
「いいよ、行ってきます」

 育実と友希が行ったから、教室には一桜と璃穏だけだった。

「今来さん、何か俺に話したいことがあるの?」
「あ・・・・・・うん・・・・・・」

 璃穏は一桜と育実の様子の異変に薄々気づいていて、一桜が嘘を吐いて、二人を追い出そうとしていたこともわかっていた。

「どうして気づいたの?」
「育ちゃんに仕事を任せたから」
「っ!」
 
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