最大の出来事
 両手を叩いて、深く頭を下げる育磨に空夜は顔を上げるように何度も言う。
 育磨が顔を上げてから、空夜の携帯電話が鳴って、電話に出た。電話の相手は彼の友達で、どうやら恋愛について話を聞いてもらいたいらしく、電話を切った後、空夜は出かける準備をする。

「どこか行くのか?」
「友達の家まで。夕方には戻るから」

 空夜が家を出て、璃穏と育磨は璃穏の部屋に移動した。

「璃穏」
「何だよ?」
「高校生活、楽しいか?」

 育磨の問いかけに璃穏は素直に頷いた。

「うん、楽しいよ。最近クラスの男子達とボウリング場へ行った」
「おっ!いいなー」

 璃穏は中学生の頃に散々嫌なことをされてきたので、楽しい高校生活をこれっぽっちも期待していなかった。

「俺とお前がもう少し年齢が近かったら、いいのにな・・・・・・」

 そしたら、もっと楽しい高校生活を送ることができたかもしれない。

「育磨、やめろ。高校でもお前の世話をさせる気か?」
「俺はお前の兄だぞ・・・・・・」

 育磨はクッションを抱えて、育実について話を始めた。

「本当に育実ちゃん達と一緒に住んでいるんだな」
「急に何だよ?」
「いや・・・・・・」
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