最大の出来事
 笑顔で言い放った璃穏に対し、育実の全身が一気に凍りついた。
 口元が引きつっている育実を空夜が指で突いても、育実は抵抗しない。

「ホラー映画?」
「うん、一緒に観ようよ」

 空夜と観るように言っても、空夜はやるべきことがあるらしく、誘いを断った。
 璃穏の誘いを受けて困っている育実を笑いながら、空夜はさっさと部屋へ行ってしまった。

「嫌・・・・・・」
「大丈夫だよ。俺がいるから」

 正直誰がいようと、さほど変わりがない気がする。
 そのことを目で訴えても、璃穏は笑顔でかわすので、無意味だった。

「璃穏君は平気なの?」
「平気じゃないよ」

 それに対し、育実は驚いて、目を見開いた。

「じゃあ、どうして?」
「興味があるから。一人で観るより二人で観るのがいいでしょ?」

 育実が良くないことを伝えても、璃穏はもうその気になっている。

「楽しみだね」
「ちっとも楽しみじゃない!」

 それから三時間後に璃穏と一緒にホラー映画を観た育実は悲鳴を上げたり、璃穏の腕を引っ張ったりして、大騒ぎだった。

「ぎゃあ!!」
「痛っ!」
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