最大の出来事
 呆気に取られて、しばらく潤一が向かった方向を見ていた。

「本当にもう、いきなり触ったから驚いたよね?」
「う、うん。それだけ嬉しかったってことだよね?」
「はぁ・・・・・・」

 一桜は育実の無防備さに溜息を零した。
 ジュースを飲んだ後、教室に戻って、一桜は璃穏に育実を半径二メートル近寄らないで守るように言った。

「育ちゃん、何かあった?」
「ううん、特に何も」

 心当たりはあるものの、そんなに大袈裟なことではないので、璃穏に何も言わなかった。

「育ちゃん・・・・・・」
「ん?」

 璃穏は引きつった顔で育実の机を見ている。

「次の授業、現代社会だよ?」
「あ・・・・・・」
 
 育実が出していた教科書は音楽だった。それを机の中にしまい、現代社会の教科書とノートを出した。

「・・・・・・どうかした?」
「本当に何もないから」

 璃穏はそれ以上、育実に何も言わなかった。
 ただ、授業中に隣で何度も視線を感じていて、授業にあまり集中できなかった。
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