君がいないと落ち着かない
それから詳しく聞いていくと、弟の実尋は忍が千尋の彼女だと聞いたあとに穴が開くほど彼女を凝視したらしいことを忍本人からも聞いた。
何故そんなに彼女を見たのか分からなかった。
今まで付き合ってきた子が家に遊びに来ても、見ることも無かった実尋が忍を見つめたことに驚いたが、それと同時に実尋も彼女に惚れてしまったのではと怖かった。
1つ下の実尋は今中学3年で千尋と同じ学校に通っているが、バスケ部の後輩で実尋と同級生に聞いても彼女が出来たことは無いみたいだった。
モテるらしく、2年の時に同級生から妬まれて距離を置かれた程だった。
結局、どんなにしつこく告白されても「いいえ」としか返さない実尋に同級生達は元どうり接するようになった。
慣れた人間としか深く関わろうとしない実尋は、性格や言動がどこか忍と似ていた。
《忍?》
この名前を本人に言えることが嬉しくて顔の筋肉が緩んだ。
本人はこの名前が嫌いらしいが俺は好きだ。