君がいないと落ち着かない
刻々と過ぎ去ってしまう時間があまりにも早いという現実に、忍は置いてきぼりを食らった気分だった。
寒さが痛くなって、緩くなって春が来る。
暖かくなり、虫達が夏だと騒ぎ始めて木々を赤く染めて秋になる。
もう2年生。もう3年生。
卒業して、大学生になって、成人を迎える。
その時、私はどこにいるだろう。
私は生きているのだろうか、死んでいるのだろうか。
憂鬱気味の表情を浮かべて遠くを見つめる忍に、精算し終えた千尋がコンビニから出てきた。
「肉まん食いなっせ?」
声のする右脇を見るとガサガサ音を発てるビニール袋を2個持って、片方を覗き込む千尋がいた。
「ピザマン派だな」
呟くように言うと、千尋はニカッと笑って「あるよ~」と言った。
「よく分かったね」
千尋の幸せそうな笑顔を見ても心が晴れないのは、自分は今悪魔に近いのではないかと感じるほどだった。