君がいないと落ち着かない
1日が遠い所から近付いて、留まること無く忍を通り抜けて去って行ってしまう。
1日が来て終わり、また1日が来て終わっていく。何て中身のない人生なのだろうか。
さっきまで立っていた小さな橋の向こうで、赤なのかオレンジなのか、はっきりしない太陽が山へ落ちていく。
2人静かに眺めていたなか、千尋が考えついたように口を開いた。
「年越すね」
「うん、補習は?」
「終わったよ全部、夏井達に手伝った貰いながらだけどね」
「じゃあ…」
遊ぼうか
そう続けようと思ったが、千尋が忍の方へバッと顔を向けてきたので、ピタッと口を告ぐんだ。
「帰ろうか」
探しだした逃げの言葉。
それを聞いた瞬間に千尋の顔に哀しみが広がり、沈む太陽に目を向けた。
「行こう?」
そっと、隣の垂れ下がった左腕に触れて、千尋の茜色に染まった横顔を覗く。