君がいないと落ち着かない
シャープな輪郭のラインが茜色に染まり、艶めく瞳が遠くを見つめている。
「喜んでる?怒ってる?哀しんでる?楽しんでる?」
「どれも当てはまらないよ」
「え?」
聞き返してみるが、そのまま橋の方へ歩きだしてしまった。
石の橋を渡り終わり、土手の斜面を下りる。
「忍、明後日暇?」
「えっと…」
「遊ぼう」
駄目?とでも言うかのように顔を傾け、忍の反応を伺っている。
小さく頷くと、切れ長の目が無くなるぐらい無邪気に笑った。
「電話する」と言いながら、忍の頭に手を置いてガシガシと粗っぽく、忍に千尋の後を残すかのように撫でてきた。
大きく骨張った手から感じる温もりが心地よく、もう少しと思っていたが「じゃあ、また来年」という言葉と共に離れて行ってしまった。