君がいないと落ち着かない

「今日、どうする?映画館とかでも行く?」
「人込み嫌い」
「じゃあ…」
「千尋の家は?」
あまりに予想外の言葉に驚いて、体も思考も一時停止した。
「そんなっ!だって、俺達まだキスもしてないんだぜ?絶対駄目だよ!ちゃんと段階を踏まないと」
焦って手をブンブン振って駄目だということを伝えようと頑張っていると、忍が冷静なまま言った。
「変なこと考えんなよ、違うから」
「だって、彼氏の家に行くってことは!」
「黙れ!」
ピシッと音を立てて、忍の柔らかい温もりが千尋の冷えた額に当たり、じんわりと染み込んだ。
「駄目ならいい」
細く伸びた指の向こうに、忍の大きな目が強く千尋を見つめている。
「お願いします!」
忍の熱を感じたまま両手を上げて言うと、突然の大声に驚いたのか額から手が離れた。


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