君がいないと落ち着かない

「マジでいいの?」
念を押すように聞くと、構えた状態でいた忍が体勢を整えてからゆっくり頷いた。
「やったー!」
「ぎゃーっ!!」
忍と2人っきりで一緒にいられる!
喜びで思わず手を広げて彼女の方へ走って近づこうとした途端、忍が叫びながら走りだしてしまった。
「待って!何もしないから」
「嘘つけ!この変態!」
振り向きながら、砂利と草で不安定な道を走って行く。
たまらず追い掛けたが、部活で鍛えている千尋が忍に追い付くのに時間が掛かった。
駅に着いてもまだ2人の息は荒いままで、薄ら汗をかいていた。
「上り?」
「うん」
電車に乗ると思ったより人が少なく、一番端に忍が座り千尋がその隣に座った。
電車が駅に止まる度に人がぞろぞろと増え窮屈になっていった。
特に話すこともなく、ただ息苦しくなっていく車内で左腕に忍の温もりを感じていた。


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