君がいないと落ち着かない

「降りるよ」
アナウンスが流れた頃に、目をつぶっていた忍に肘で突いて声を掛けて立ち上がった。
千尋の動作を目で追っていた忍も駅に到着すると立ち上がり、千尋の後に続いて電車から降りた。
都会に近い駅であるため、人の人数が乗った忍の最寄り駅よりも数倍に多い。
人の波に揉まれて辛くないよう、どうにかして忍を人が少ない場所へ連れて行こうと探していると、服の裾を引っ張られた。
呼び止められたのだと思い後ろを向くと、視界に映る忍の姿は周りの人間が被さり削られている。
「どうした?」
「え?いや、はぐれないようにと思って…」
苦笑いを浮かべる忍は、いかにも辛そうな顔色だった。
心配になり、急いで改札口を通って人の少ない場所に出た。
「大丈夫?」
「吐きそう…」
伏せた目に平行な眉、結ばれた唇から、いかにも気分が悪いことが分かった。
「すぐそこだけど、休む?」


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