君がいないと落ち着かない

靴を脱いで近寄ると、「うぎゃっ!」と忍が叫んだのと同時に、2匹が彼女のがに股に開いた足の間から千尋の足元へ来た。
どちらの犬も交互に後ろ足で立って、千尋の脛に前足を掛けて懐いてきた。
「犬嫌い?」
「友達の犬に一度咬まれたことがある」
「トラウマ?」
ぼたもちともちもを両手に抱き上げて忍に近づいた途端に、「ウォフッ」と2匹が彼女に向かって吠え始めた。
「うわぁぁぁぁ!」
震える声を上げて頭を手で押さえると、そのまま向かいのリビングのソファーの後ろへ走り隠れてしまった。
犬を抱いたまま追い掛け、頭を抱え込んで小さくなった忍に近づく。
「俺の部屋行こう?犬は入れないから…」
そう言うと、忍はそろそろと顔を上げて千尋と目を合わせた。
いい…こんな忍ちゃん、ものっそい可愛いい
「キッチンの横の部屋」
こくんと頷いて、四つんばいで千尋の部屋へ向かう忍を見てから犬を放してキッチンへ入り、お茶を取り出した。


< 133 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop