君がいないと落ち着かない
「お待たせ~」
クマと青のマグカップを両手に持って部屋に入ると、ベッドの端に寄り掛かる忍が雑誌を眺めていた。
「よお、巨乳好き」
「は?」
「ベッドの下にあった」
「うわぁぁぁぁ!!!」
机の上にコップを乗せて、忍がもつエロ本を取り上げる。
「女の子がこんなのを読むんじゃない!」
焦って忍を叱り付けるが、耳元でうるさく心臓のドキドキが聞こえている気がした。
唇を尖らせて膝を抱え込む体勢に座り直した忍はぶつぶつと呟いている。
「…………変態!!」
「うえっ!?」
「榎本千尋は変態だ!」
「しっ!違うから」
叫びだす忍の口を手で塞ぐ。
ムゴムゴと温かいくぐもった息が手のひらに掛かった。
声がうまく出せないと分かったのか、黙った忍は千尋の手で半分隠れた向こうで拗ねた表情を浮かべた。