君がいないと落ち着かない

ふわふわとベッド特有の眠気に誘われ、体を布団に沈めると千尋の匂いに浸った。
ぼやつく視界の中で、アルバムに浸る千尋の姿を眺める。
通った鼻筋にキリッとした眉、整った顔立ちを見ていると彼女に困らないのも無理もないだろう。
「てめぇ、ムカつく」
右手を伸ばして千尋のきめ細かい肌に触れ、嫌味な言葉を呟く。
千尋が戸惑った表情をしながら忍を見つめている。
馬鹿だと自己嫌悪に陥って、手を戻そうと思ったが、もうだるくて流れに任した。
「忍どうした?」
「眠い……」
「あぁ、寝ていいよ」
その言葉を聞いた忍はまどろみまどろみ、やがて目を閉じた。
「おやすみ」
千尋の優しい声に一度目を開けた忍は、ベッドの脇に垂らしていた右手を出した。
手を繋ぎたいことを指したつもりだったが、千尋は分からなかったらしく、結局、「手」と言うはめになった。


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