君がいないと落ち着かない

忍を跨いで四つんばいのような体勢になった千尋は、彼女を真剣な眼差しで上から見下ろしてくる。
「千尋?」
「あんな声聞いたら、男は皆止まんないよ」
「え?」
体が鉛のようで動かない。
怖くて目を見開く忍とは反対に千尋は目を細めながら、ゆっくりと近付いてきた。
「……キスするよ?」
混乱で頭がいっぱいで声が出てこない。
嘘!ヤバイ、やり方分かんない

コンコン、ガチャ
「ただいま……!!」
「実尋!」
「……ごめん」
千尋の体でベッドから見えるはずの出入口のドアの前にいる男の姿が見えなかった。
でもその男は一言謝ってすぐ、部屋から出て行ってしまった。
「誰?」
「弟」
ドアの方を向いていた千尋は顔を元に戻して答えると、また顔を近付けてきた。


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