君がいないと落ち着かない
小学生みたいな無邪気な笑顔を見せて言う千尋を忍は頬笑むだけで何も言わなかった。
「どうした?大人しいね」
覗き込みながら心配されてふと、河崎達と話した場面が脳裏をよぎった。
「…ごめん」
「え?何が?」
「千尋が告白してくれた日…忘れた」
目が熱い。
千尋の顔が滲んで見えてきた。
「…お仕置きだね、目つぶって」
言われたとおりに目をつぶり、自分がした罪の重さを再認識する。
千尋には幸せにしてもらってばかりで、自分は彼を不幸にしている。
好きな人に自分の思いを打ち明けた日を忘れられるなんて残酷過ぎる。
それが2人の始まりの日なら尚更だ。
笑い事では済まされないほど自分は酷いことをしてしまったと、忍は深く反省する。
「逃げないで」
千尋の深い声がして右の頬に手を触れられ、唇に冷たく固い感触がする。
リップだろうか、顎を上げられて唇に沿ってそれが動く。