君がいないと落ち着かない
下唇、上唇と塗られて、千尋の「いいよ」の言葉で目を開らくと、柔らかく笑った千尋がはっきり見えた。
「似合う、ぷるぷる~」
「…駄目だよ、私忘れたんだから」
必死で、怒ってくれと懇願するが、千尋はしっかり目を見つめるだけだった。
「…怒ってないの?恋人ってそういう日を記念日にしてるんじゃないの?」
「してるね、でも、告白したばかりが記念日じゃないし」
「…」
「じゃ、今日を記念日にしよう!決まり!」
無邪気な笑顔に泣きそうだった。
責めずに、笑って吹き飛ばす彼が酷く愛しく思えて、胸が締め付けられた。
「実はさ…!?」
触れ合う唇。
息を止めてるせいで体が震え、リップで滑りそうになりながらも必死でくっつけて、千尋の体温を感じた。
「忍、そこ鼻の下」
それを聞いて、腰を上げて前のめりにしていた体をバッ引くと椅子が膝の裏に当たって痛かった。