君がいないと落ち着かない
めっちゃ好き
「俺も憶えてないんだよね」
忍に塗ったリップを唇に付けたままそう告げると、目を見開いて驚く忍。
「ごめん、でもめっちゃラッキー」
忍の気分が晴れたかは分からないけれど、初めてキスした今日を記念日とした。
温かくて柔らかくて、眉間にしわを寄せる忍の表情は以上にそそる。
「嘘だろ?自分すっげー馬鹿な奴じゃん…」
「怒った?」
首を振って答える忍の頭を撫でて「帰ろう」と言うと、頷いて顔を隠しながら帰る準備をし始めた。
千尋も体育館へ戻って制服に着替え、待っていた忍と駅へ向かった。
「え?中学の同級生?」
《うん、帰りにコンビニ寄ったら店員が同級生だったの》
電話を通して懐かしげに話す忍が、遠くの人のような気がして怖く感じる。
自分の知らない時間が多過ぎて、遊んだりキスしたりして縮まったと思った距離も、今は何だか遠く感じる。