君がいないと落ち着かない
「兄に変態とか言うな~!只でさえ今、ガラスのハートなのにー」
千尋の言葉にムカついたのか可愛さの残る顔をしかめ、冷たく言い残して部屋に行ってしまった。
~♪♪
握っていた携帯が音と共に光った。
部長からのバスケ部一斉送信で、今週の土曜に森山高校の駅向かい、西口の県立高校と練習試合をするという内容だった。
「千尋、体温めとけ」
「ウッス」
敵と味方が走り回っている目の前のコートから、じわじわとくる熱気が凄い。
負けてる。
敵チームの5番、周りより飛び抜けて動きが細やかで確実、滑らかで見惚れるプレーをしてくる。
背も普通で、細くて肩幅もそんなに広くないのに、彼のフォローで点差が広まる。
「メンバーチェンジ」
智弥や監督、コートの中にいる先輩達に背中を叩かれて気合いが入る。