君がいないと落ち着かない

熱い、でも体は軽い。
重い、でもそのおかげで体の重心が固まって動きやすい。
パスが回って、千尋の骨張った大きな手にザラついた表面のボールが吸い付く。
来いよ、5番!


負けましたよ、何だかな~
ゴールに入れても入れても追い付かれ、抜かされていく。
「お疲れ、千尋」
「彼女の応援は?」
「来て無いっすよ」
慰めるかわりに弄るのが先輩達のやり方。
励まし合うのは森山高校バスケットボール部の柄じゃない。
バッシュの紐を解いて緩めていると、誰かが千尋の隣に座ってきた。
「……あんた、上手いよな」
智弥か弄りに来た先輩かと思っていたが、あぐらをかいて座ったのはあの5番だった。
「ありがとう」
「彼女いんだな」
「は?」


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