君がいないと落ち着かない

短く言い切って離れると、智弥が肩を組んで真田に目を向けてからひっそりと小声で話し始めた。
「今日、青倉さんは?」
「もう帰ったと思う」
「誘えば良かったじゃん」
まぁ、誘いたかったけど…真田のことで今、忍に会いずらいし…
千尋は胸の中で膨らんでいくモヤモヤが、次第に自分の体に染み込んでいく気がした。
「練習試合に呼んでどうすんだよ」
心なしか、口から出たのは酷く弱々しい声で、更にモヤモヤが広まっていく。
俺って心が狭い…
人が誰を好きになって、誰と付き合うかなんて、そいつが決めることであって、自分ではないんだ。
忍が真田が好きでも、千尋を好きでも、全く別の男を好いても、男より女子が好きだとしても、自分には決める権利はないんだ。
忍が俺だけのものになればいいのに…
「1年!モップ掛けろ!」
「「うぃーす!」」
一斉に倉庫へ向かってモップを持って、体育館を走り回る。


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