君がいないと落ち着かない
バッシュがバタバタと床を跳ねる音、キュッキュッと耳障りな甲高い音とが、響き渡る。
試合とは気持ちも熱気も違うけれど、音が似ていて、心地いい。
モップ掛けが終わると、両チームとも監督の所へ集まり話を聞き、解散となった。
「榎本」
部室に着替えにいく先輩や1年、対戦高はというと体育館で簡単に着替えてからゾロゾロと帰って行く。
1人、水分補給していた千尋は、着替え終えて制服姿の真田に話し掛けられた。
猫目に千尋より頭二つ分低い身長は、可愛らしさがあった。
「ぁあ、何?」
「…アドレス教えて」
「忍のをか!」
「…何で青倉を名前で呼んでんだ?」
しまった……
千尋が焦るより早く、真田の表情から可愛さが消え去って、どんどん鬼みたいに見えてきた。
「仲良いんだよ」
とっさにそれらしき言い訳をしたが、嘘だと確信しているのか、更に怖い顔になる。