君がいないと落ち着かない

バッと顔を上げた真田の真っ赤な頬に、体育館に窓を通して刺し込む光が当たって、まるで林檎みたいだった。
「照れてるのか?」
「うるせぇ、いいから教えろ」
生意気な中坊に見えてきた。
忍は、こんな可愛い奴を好きになったのか…
知らなかった忍の中学時代の姿が、ぼやぼやと浮かんできた。
うるさく騒ぐ教室で、きっと忍は席で本を読んでる。
たまに友達がきて、ゲラゲラ笑いながら休み時間を過ごすんだろう。
真田は友達とふざけあって、やり過ぎて、怪我して喧嘩して気まずくなって、結局笑いながら仲直りするんだろう。
微笑ましくて、遠い。
気を付けないと涙が滲むほど、疎外感で苦しめられた。
「榎本?」
「待って、…はい」
悟られないように頭を掻いて誤魔化しながら、携帯を取り出した。
「たまに、メールとかしていいか?」
「構わんよ」


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