君がいないと落ち着かない

緊張気味に呟く言葉に、ハッキリと答えると、猫目が細まって可愛らしく笑った。
「ありがとう、行く」
「じゃあな」
携帯をしまった真田は、後ずさってから背中を向けて、待っていた友達と帰って行った。
俺はどうやっても、真田みたいに可愛くはなれねぇだろうな…
姿のないあの男と自分を比べて思う、人と人の違い。
千尋はガタイがいいから、華奢な真田には、なりたくてもなれない。
もし自分が華奢で、忍よりちょっと背が高いぐらいで、目が大きかったらと、無い物ねだりにふけっていた。
「千尋?」
聞き慣れた智弥の声に振り向くと、制服姿にスポーツバックを肩から下げて立っていた。
「早く着替えろよ」
「うん…、お前は好きじゃねえよな?」
「は?」
「何でもない」
ニッと智弥に向けて笑った千尋は、まだ騒ぐ部室に入った。




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