君がいないと落ち着かない
「そういえばさ、あの人学校辞める?」
れー子が気まずそうに聞いてきた。
強い衝撃が胸に刺さる。
まさか…
もし本当だとしても、自分には必ず言ってくれると思っていたから、れー子の言葉を聞いた途端に心臓が耳元でバクバク鳴っているようだった。
「…え、辞めちゃうの?」
林が聞く。
「分からないけど…勉強出来なさ過ぎて留年しそうだって聞いたけど…」
そこまで言ってれー子が水筒に口を付けた。
「留年って成績表に1がついたらでしょ?」
黙っていた河崎が、携帯から顔を上げて口を挟んだ。
「らしいね」
「シノちゃん、本当?」
林が心配そうに聞いてくれたが、知るはずのない忍は、首を捻るしか出来なかった。
そこから話はずるずると曲がって、千尋の話からはどんと離れていった。
3人との会話を楽しんでいたものの忍の頭の隅には千尋の事が、染み付いたように残っていた。