君がいないと落ち着かない

挙げ句の果てに、千尋を彼氏という特別な立場に立たせてしまう、自分の図々しいさに嫌気が刺した。
出来過ぎた世界だ…
ため息と同時に、白く揺れる息が、闇に溶け込んで消えた。
こんな風に思えるのはきっと、この闇で囲まれた今が、切り取られた絵本のように感じるからだろう。
「……千尋さ」
「ん?」
頭の隅で叫ぶ取っ掛かりが、言葉にならないまま、ただ熱く胸を焦がす。
痛くて痛くて、嫌々涙が溢れる。
「忍!」
「うっ…ふ、ヒック」
「何で!どうした?」
マフラーに涙が落ちて、それが顔に当たって気持ち悪い。
頬が濡れ、鼻の頭までもが、マフラーに付いた涙で濡れる。
「何かあったのか?」
慌てた千尋が近寄って、顔を覗き込んできたが、泣き顔を見られないように手で隠した。
「忍~」


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