君がいないと落ち着かない

もっと惚れさせてやらぁ


「っるせぇな!触んなよ!」
思いっきり腕を振られたが、女子と男子では力の強さが違う。
隙間なく握り込んだ忍の右手首を、離すつもりはさらさら無いが、触んなと言われたのは、結構傷ついた。
頬から顎までに添えてた左手を離してからも、まるっきり目を合わせてくれない。
「あ゛あ?ふざけんじゃねぇぞ?」
「ふざけてない!バーカ!てめぇなんか!留年でも、退学でもしちまえよ!」
「忍!」
「ふざけてなんか……ない……」いきなり、力なく呟いた忍は、疲れたのかぐったりし始めた。
文化部で体を動かして無いからか?
心配になって握る力を緩めると、すかさず振り払われた。
「千尋!止めろよ!」
夏井に肩を引かれて、忍との間に少し距離が出来た。
「青倉さん、平気?」
「……すいません、戻ります」
俯いて垂れた髪で表情は分からなかったが、微かに見えた耳が赤くなっていた。


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