君がいないと落ち着かない

人数が多いから、在校生は出席しないが、バスケ部で集まるため、昼過ぎに学校に行くことになっている。
試験が終わってからも、忍と図書室で過ごすことは、変わらず続いた。
千尋が勉強もせず、ぼーっとしていると、壁の向こうの忍が本を棚に返しに行った。
戻ってきて帰りの支度をする忍から、隙間を通って手紙が出てきた。
見てみると、[帰る]と書かれていて、壁の向こうから忍の顔が出てきてびっくりした。
バックを肩に下げた忍は、千尋を見ることなく外に出てしまった。
嫌でも一緒に帰らせてもらおうと思い、図書室を出ると、赤やオレンジに染められた忍が、窓を眺めていた。
「忍」
優しく声を掛けると、すぐこっちを向いて頬笑み、また窓に視線を戻してしまった。
「好きだよ、千尋」
いきなり言うから小さい脳が動かず、その場であたふた取り乱して、ただ短く「俺も」と答えてみた。
「でも、いつか離れるときが来る。別れるか、死ぬか、遠くなるか…」


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