君がいないと落ち着かない

赤い光に包まれた地球は、やがて太陽に飲み込まれていくんだろうと思った。
「大切な人は、長く一緒にいた人は、心に残る傷をつける。別れても、逢うことが出来なくても、傷の痛みで思い出すんだ。笑った、怒られた、泣かした…」
「うん」
「あの時、まるで正論のようにベラベラ話したこと、あれは間違ってた。人それぞれではあるけれど、思い出すということは忘れたわけじゃないんだよね、確実に存在している」
赤く染まる忍の立ち姿は、いつか見た、アニメーション映画の1シーンみたいだった。
勇気強く、芯が堅く、愛する心を持った青年の生き様を描いた作品だった気がする。
陽の光に当たると死に至る人種の青年は、見たことのない太陽に憧れていた。
今の忍の姿に重なるのは、後半の一番最後のシーンだ。
見やすい草原の丘で、青年は死ぬまでの3分間を赤い夕陽に染まり続けた。
皮膚が硬くなり、指や感覚が足から消えていった。
目の機能が停止するまで、もう固まった脳裏に焼き付けていた。


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