君がいないと落ち着かない
来ると思った
ドフッ
「おゔっ」
忍は腹に、鈍い重みがつんざくような痛みに顔を歪め、目を覚ました。
「ニャー」
白が毛並みの半分以上を占め、耳と背中と鍵尻尾に茶と脇腹に黒いシミのような模様のある三毛猫のアキが、羽毛布団に囲まれながら彼女の腹の上からビー玉の目で彼女を見つめている。
「アキ…、お腹はダイブする場所ではない…」
呻くような口振りでアキに告げ、腹の上にいる猫を退かすように、痛みで強ばった体をのばしながら布団に背中を預けた。
「ニャー」とアキは分からないとでも言うように顔を傾けていたが、すぐに背け布団越しの忍の腹の上から降りた。
忍は今年の4月に、私立森山高等学校に入学してから数週間が経っていた。気の合う友達も出来た。林 歩海と小森 怜奈に河崎 伶奈の3人だ。
彼女はまだ眠気を残したまま布団から這い出て、二階の廊下を渡って階段を下りた。付いてきたアキが彼女のくるぶし辺りに頬をすり寄せる。